吉田ゴンザブロー(老人アルバイター評論家)
昭和24年1月2日生まれ。団塊の世代を代表し、「老人アルバイト伝説」を毎日発信。サラリーマン時代はは経理部長を務めていたが、現在はアルバイトを2つかけもつ下流老人。今日のテーマは「高齢者の自動車免許返納問題 老人アルバイターも他人事じゃない」です。人生100年時代。老害とは言わせんぜ!
業務車両で接触事故を起こした老人アルバイター
老人アルバイター評論家・吉田ゴンザブローです。
高齢者の免許返納問題が年々大きな話題になっている。
確かに老人のクルマの運転はあぶなっかしい。
俺のバイト先のひとつ、スポークラブの駐車場。業務はお客さんのクルマの出し入れだけではなくて、会社の業務車両数台の管理もそのひとつである。
仕事が終わり帰る前に、上司にお伺いし、何台か出庫しなければいけない時がある。
まー、ただクルマを出すだけなので、どうってことない仕事なんだけど、なんせ老人アルバイターばかりの職場。けっこうクルマを壁にぶつけたり、複数の車両どうし接触させてしまう者がいる。
4月に病気で一人辞めたので、ゴールデンウイークあけに新人が一人入ってきた。
中村郁夫(66歳)。元公務員。
俺が教育係を務めて、3日間基本業務から最後の業務車両を出すところまで教えた。だいぶん慣れて大丈夫だなと思ったんで、4日目から独り立ちさせることにした。
初めての一人業務。心配したが、中村も大人。いつも、新人さんには「何かあれば電話してくれ」と言っているが、ほとんど電話がくるなんてことはない。大丈夫だろう、そう思っていた矢先だ。
なんと、夜の9時過ぎくらいに中村のケータイから電話がきた。
『よ、吉田さん。今すぐ来てください。大変なことが起きました』
なんと、中村が、業務車両を並んで出すのに、接触事故を起こしたみたいだ。
『わ、私はどうしたらいいんだろう・・・』
気が弱い中村は、明らかに動揺しているので、俺はすぐに現場にかけつけた。
しかし、事故といっても大したことはなく、クルマを並列で並べるのに、横のボディーが少しこすれたくらいだった。
「あー、これくらい問題ないよ。うちの社員はクルマの状態に興味ないから、ほっときゃわかんないいよ。黙っててやるから忘れようぜ!」とつとめて明るく話してやった。
「死んでお詫びしたい」接触事故悔やみ夢でうなされる
接触事故は、中村と俺だけの秘密ということで話はまとまり、誰も知らないまま2週間が経過した。
俺もそのことを忘れていたんだけど、その事故の2週間後くらいの深夜、中村から電話がきたんだ。
『吉田さん。私色々考えたんですが、事故の件、自首しようと思っています』
自首?
そう、吉田は業務車両をぶつけたことを気に病み、夢でうなされていたという。
「いやー、あれは俺とあんただけの秘密だろ。俺は口が堅いから気にすんなよ」
そう言ったが、中村は明らかにおかしくなっている。
『いやー、私はもう限界です。事故のことが夢に出てきてうなされてしまう。トラウマになってしまいました。私はどうしたらいいんでしょうか?』
知るか、オカンに電話して聞けや!
そう俺は突き放し、電話を切った。
次の日にバイトに出勤したら、支配人が来て「中村さんが辞めるって電話きたんで、今日通しでできますか?」と言われた。
辞めた理由を聞いたが「一身上の都合としか言わないんです」とのこと。
たぶん事故のことで気に病んで、来れなくなっちまったんだろうね。何とも気の弱い男だよ。
中村は、某市役所でまあまあな要職に就いていた男だよ。2000万円以上の退職金もらってマンザラでもない老後を迎えた頃に、老人アルバイターのクソみたいな現場で、業務車両の軽い接触くらいで、飛んでしまった。
これはでかい挫折だよね。
中村は今後の人生、きっと事故のことが夢に出てきてうなされるんだろう。
気の毒な話だ。
そういえば、「現実から逃げれば、そこには地獄が待っている」って加藤諦三先生が言っていたよ。
高齢者の免許返納問題、真剣に考えなきゃいけない時期にきているのかもしれないね。
※当サイトはある人物の依頼により立ち上げました。当サイトに登場する人物や職場などはすべて架空のものですが、実在する人物に取材をし、その方の話をモデルにし、本人と特定できないように大幅に修正しております。
コメント