吉田ゴンザブロー(老人アルバイター評論家)
昭和24年生まれの団塊の世代。シニア世代を代表し、老人アルバイターの特徴を分析。老人の「アルバイト列伝」を日々発信。某私立大学経済学部卒。中小食品メーカーに入社。部長職に上り詰めたが、定年退職手前で会社が事実上倒産。現在はとある事情から、スポーツクラブの会員専用駐車場と大手コンビニ弁当工場のダブルワーカー。「老害」とは言わせんぜ!
高倉健に憧れ、入れ墨を入れた老人アルバイター
老人アルバイター評論家・吉田ゴンザブローです。
俺は大手コンビニの弁当工場でバイトしている。
その工場の老人アルバイター仲間で、格闘家のような鋭い目をした男がいる。
男の名は、千葉茂雄(71歳)。
ヤツも昭和24年生まれ団塊の世代だ。
千葉は俺と同じ班なので、休憩時間は同じ。喫煙所でいつもいっしょになる。とっつきにくいが、実は気さくな男だった。
更衣室で一度、千葉が大汗をかいて下着を取り換えているのを見たことがある。
なんと、千葉は全身入れ墨を入れていたんだ。極道が入れるような本物の入れ墨だった。若いヤツが遊びでよくやる「タトゥー」とはわけが違う。
帰り道がいっしょだったので、聞いてみたことがある。
おい、千葉。お前はヤクザだったのか?
「いや、それは違う。俺は40年くらい前、空知地方のある街で、炭鉱夫をやっていたんだ。炭鉱夫は入れ墨を入れてこそ一人前と言われていた時期があるんだよ。先輩達に言われてつい彫ってしまった。でも、高倉健に憧れていたから、マンザラでもなかったね」
入れ墨を入れて後悔してるよ・・・
千葉が働いていた炭鉱は、80年代に廃坑になり、失業。
貯金をはたいて、旭川で飲食店を経営していたが、10年ほど前につぶれてしまった。
「墨を入れたのは後悔してるよ。若い頃は調子こいてたから、ずっとかっこいいと思っていた。だけど、銭湯とスポーツクラブに行けないから、すごく不自由だ。」
最近、入れ墨を入れていてもはいれる公衆浴場ができたらしい。今度、俺といっしょに行く予定である。
千葉の仕事ぶりはとてもまじめで、社員からも信望は厚い。
炭鉱マンの誇りは今も、その墨の中に宿っているのかもしれない。
※当サイトはある人物の依頼により立ち上げました。当サイトに登場する人物や職場などはすべて架空のものですが、実在する人物に取材をし、その方の話をモデルにし、本人と特定できないように大幅に修正しております。
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