吉田ゴンザブロー(老人アルバイター評論家)
昭和24年生まれの団塊の世代。シニア世代を代表し、老人アルバイターの特徴を分析。老人の「アルバイト列伝」を日々発信。某私立大学経済学部卒。中小食品メーカーに入社。部長職に上り詰めたが、定年退職手前で会社が事実上倒産。現在はとある事情から、スポーツクラブの会員専用駐車場と大手コンビニ弁当工場のダブルワーカー。「老害」とは言わせんぜよ!
老人アルバイターになりたての頃、ハケンに登録して短期のアルバイトを色々やっていた。
いつか、お盆過ぎから夏の終わりまで、山奥の野菜選果場でスイートコーンの選果のバイトをやったことがある。
派遣会社が用意した送迎バスで、小2時間揺られて作業場まで行く。
ハケンはざっと20人いた。女6割、男4割くらい。年齢は様々で、見も知らぬ20代から60代の老若が重苦しいムードでバスに揺られていた。
移動が往復4時間。作業時間が8時間のハードスケジュールには、還暦を過ぎた俺には大そうこたえるバイトだった。
「疲れますねー」
隣の席の男が話しかけてきた。俺と同じ年代。薄い頭髪。しかし白髪の髪は肩まで伸ばし後ろをゴムでしばっていた。何やら貧乏ジャズマンのような装い。
男の名は宮本和博(当時60歳)。
とても感じのいい、気さくな男だったので、俺達はすぐに意気投合した。
あれは確か作業日10日目だったかな。宮本が唐突にこう切り出してきた。
「吉田さん。俺、実はASなんですよー」
AS。???あんた自閉症スペクトラムなのか。
「いえ、それはASDでしょ。ボクはAS。アナル専門ってことです」
アナル専門・・・?
宮本はニヤリと笑い、ガラケーの画像画面を差し出した。そこには、40代から60代の女性が、布団の上でリアルに大便をしている画像がわんさと保存されていた。
「俺の歴代の彼女です。俺は愛した女性のアナルは必ずいただく主義なんです。最後に、うんこをしているところを写メさせていただくんです。もちろん愛してるって言ってあげてますよ」
それじゃあ、AS(アナル専門)というより、スカトロジーのほうなんじゃないのかね。ていうか、何が「愛してる」だ・・・。
「ま、どっちでもいいじゃないですか。お尻にまわるものなら何でもいいんですよ。中々理解されませんけどね」
信じられない話だが、宮本は既婚者。孫もいた。まして60代だ。ヤツはコンビニやスーパーのレジ係を口説いて、日夜アナル・スカトロジーな活動をしているとのことだが、本当にそんなことがあるのだろうか。
宮本は、スイートコーン選果場を1ヵ月過ぎた頃、ハケン先の責任者の逆鱗に触れ、その現場を切られてしまった。
仕事中、ハケン仲間の50代のおばさんをしつこく口説いているところを、責任者に見つかってしまったのだ。
その後、宮本とは一度も会っていない。ヤツは俺とほぼ同年代なので、すでに70歳を超えている。今は介護される立場で、自分が糞尿をまきちらいているかもしれないね。
それにしても、いろんなヤツがいる。人生色々、アナルも色々だ。
だから、老人アルバイター生活は辞められない。
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