吉田ゴンザブロー(老人アルバイター評論家)
昭和24年1月2日生まれ。シニア・団塊の世代を代表し「老人アルバイト伝説」を毎日発信している。サラリーマン時代はは経理部長を務めていたが、現在はアルバイトを2つかけもつ下流老人。今日のテーマは「深夜スーパーの思い出 商品を盗むバイトを捕まえた老人の話」です。老害と蔑まれてもしぶとく生きようぜ!
深夜スーパーのアルバイト 訳ありの人間がひしめいている
老人アルバイター評論家・吉田ゴンザブローです。
深夜スーパーで働いたことがある。
夜の8:00から午前4:00くらいまで、休憩は1時間。
最低賃金の時給に深夜料金が加算される程度の安いバイトだったが、客数が少なく、うるさいことを言う社員達が全員帰宅していたので、深夜帯のスーパーはとても居心地がよかった。
その時間帯のバイトは、訳ありの人間達ばかりだったが、絆は厚かった。
とくにつっこんで問い詰めるようなことをする人はいなくて、人間関係のいいバイトのひとつだったとおもう。
俺は、青果部門で働いていた。
夜部隊は俺の他は2人。
佐良さんという46歳の経歴不詳のお兄さん(頭が悪く吃音がひどかった。前歯なし)と、田畑君という21歳の男の子。
今日は田畑君の話をしよう。
田畑君は、そのスーパーの近所に住んでいる大学3年生。
高校3年生からそこでバイトしていて4年目。まじめで仕事が出来て、社員から「たばっちゃん」と言われ信用されていた。
俺も色々とお世話になっていて、休憩時間には缶コーヒーをおごってあげたり、なんだかんだと仲良くしていたんだが、ある日、田畑君のとんでもない行動を目撃し、平和な時間がぶち壊されてしまう。
結論から言えば、田畑君は、店の商品を毎日盗んでいた。
ある時、休みのはずの田畑君が「忘れ物を取りに来た」とかいって、店に顔を出していたのだが、挙動不審だったので、後をつけたところ、お米5キロとサクランボなどの高価商品をレジ袋に勝手に入れて持ち出そうとしていた。
見ちゃいけないものを見てしまった気になり、声をかけるのをためらったが、見逃すわけにはいかない。
『田畑君。それちゃんと会計したのか?』
俺はドキドキしながら問い詰めた。
田畑君は驚き、急に冷や汗を掻き、手足が震えだした。
ちなみに、深夜帯は防災センターは機能していない。
店の商品を盗むバイトに説教を垂れる老人アルバイター
俺は休憩室に田畑君を呼び出した。
田畑君は泣き出した。
いつもこんなことをしているのか。怒らないから言ってみなさい・・・
『ぼくは、母子家庭で、とても貧乏でした。お母さんは病弱で、家計を助けようと思ってバイトを始めた。店の商品の持ち出しは、バイトを始めた頃からやっていて、お米はしばらく買ったことがありません。お母さんはたいそう喜んでいます』
「うーん。そんな諸事情があったのか。わかった今までのことは見逃してやるよ」ととりあえず言ってしまった。
『お願いします。もうしません。店長やチーフには言わないでください』とその場はそれで終わったが、帰ってから何か納得のいかない気分になった。
何が「母子家庭」だ。何が「お母さんがよろこんでいる」だ。
ただの窃盗じゃねーか。そんなの何の説得力もないぜ。
5キロのお米が2,000円だとして、毎月盗んで4年間で96,000円だ。その他肉や野菜も盗んでいたという。店の損害額ははんぱない。
だいたい、窃盗はじゅうぶん犯罪だ。
そんなことを、21歳で身につけたら、今後の人生どこかで破綻することが目に見えている。
本人のためだ・・・
俺は、次の出勤の日、早めに出て店長に通報した。
田畑君はすぐに解雇になった。商品の弁償は免除されたらしいが、泣きながら帰っていったという。
田畑よ。俺を恨まないでくれ、お前のためだ。
田畑君は今はすでに30歳は過ぎているだろう。就職し社会人をまっとうしているだろうか。
そうであることを祈っているよ。
※当サイトはある人物の依頼により立ち上げました。当サイトに登場する人物や職場などはすべて架空のものですが、実在する人物に取材をし、その方の話をモデルにし、本人と特定できないように大幅に修正しております。
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