吉田ゴンザブロー(老人アルバイター評論家)
昭和24年1月2日生まれ。シニア・団塊の世代を代表し「老人アルバイト伝説」を毎日発信している。サラリーマン時代はは経理部長を務めていたが、現在はアルバイトを2つかけもつ下流老人。今日のテーマは「床屋の常連になる老人 これぞ荒行である」です。
床屋へ行くのにプレッシャーを感じずにはいられない
老人アルバイター評論家・吉田ゴンザブローです。
床屋って嫌だね。
床屋は人間を試される。
できることなら、床屋には行きたくない。
何がいやだって、床屋の店主や店員との会話だ。
何か話さないといけないという強迫観念が俺の心に大きなプレッシャーをかけてくる。
俺はかれこれ、25年くらい同じ床屋に通っている。
近所の「BARBARモロハシ」という店だ。
店主の諸橋は俺より10歳年下のおしゃべり好きな男。
最初なんとなく入って髪を切って以来、2ヵ月に1回、気が付けば25年のつき合いになる。
諸橋と俺は、プロレス大好きオヤジで、全日本だの新日本だの、前田日明のリングスだの、週刊プロレスのターザン山本が面白いだの、初対面で意気投合してしまった。
しかし、考えてみれば、俺は初対面の人間と気安く話をするなんてもっての他の「人見知り人間」だ。本当の俺は例え趣味があおうがあわまいが、知らない人間とフランクに話すなんてありえない。
それ以来、俺は諸橋の前では陽気なキャラを演じるようになった。
陽気なふりだけでない。強い男も演じている。
ホントは柔道は3級の茶帯のくせに、初段で黒帯だというウソを25年も言い続けている。
そうそう、諸橋が、俺にタメ口をきくのも早かった。
あれはモロハシに2回目に行った時。
最後に髪を洗う時に、「痒いとこあったら言ってねー」なんて軽口をたたきやがったが、そんなことを気にする小さい男と思われたくないので、気にしないふりをした。
しかし、基本的に俺は10歳以上下の人間のタメ口は許さないタイプだ。
正直、モロハシに行くのがとてもプレッシャーとなったが、そんなことを気にする小さい男と認めたくないので、意地を張っていたら25年も経ってしまった。
先日、諸橋が「店を畳むことにした」と打ち明けた。
持病が悪化して、ハサミを持つことが辛くなったとのことである。
「寂しくなるね」と言ってあげたが、正直ホッとしている。
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